松山家庭裁判所 事件番号不詳 決定
少年 S(昭一五・一・二九生)
主文
少年を保護処分に付さない。
理由
本件送致事実は、少年は法令に定められた運転の資格を持たないで、昭和三四年五月二〇日午後四時四〇分頃、松山市○○町××××番地先路上において軽自動車を運転し、無謀な操縦をした、というのであるが、少年は外形的事実についてはこれを認めるけれども、右軽自動車を第二種原動機付自転車(以下第II種と略称する)であると誤認してこれを操作し、走行した旨主張するので、この点について判断をするが、一件記録に徴すると、少年は昭和三四年二月九日付第二種原動機付自転車運転許可証の交付を受け、松山市○○町××××販売店の店員として、同店所有の第II種を運転して配達等の業務にたずさわつていたところ、たまたま上記の日に自己の乗用する同店の第II種が故障したため、同市○○町△△修理工場に修理を依頼し、その間の代用として同工場の本件軽自動車を借受け、これを運転したものであること、更に本件軽自動車は型(クルーザー)も旧式で、既に車体も老朽化して廃棄寸前のものであり、且つナンバープレート(番号札)も脱落していたことが認められる。ところで、第II種と軽自動車を区別する基準は、道路交通取締法施行令、総理府令等の定めるところにより、その車体の大小、内燃機関の原動機の総排気量等によるのであるが、常識的には、車体後尾に付設される番号札の色、許可ないし免許の主体(例えば、愛媛県、松山市等)の表示、タンクの大きさ等により識別され、しかして、第II種を運転する者が、法規或いは実地等の学習の結果受験して、その許可を受けた以上、その種別についてもこれを知悉し、これを容易に分別することができることは推測に難くないし、車体が古く番号札がないという格別の事情があつても、運転の際の車体の様子、排気音、速度、動揺等の感じから識別が特に難しくはないと考えるのがむしろ経験則に合致するであろう。とりわけ、少年は本件送致以前既に一三回にわたる道路交通取締法同施行令違反(原動機付無許可運転一〇回、許可証不携帯二回、速度違反一回)の前歴の持主であつて、保護観察にも付せられ、罰金刑をも課せられておつて、十分交通法規の理解遵守について配慮する機会があつたのであるから、当然車種の識別についても認識をもつておる筈であり、上記の主張は処分を免れるための弁解に過ぎないとの疑いをさしはさむ余地が自己合理化のための防衛機制が強いという鑑別(在宅)の結果と併せてみてもあるけれども、少年は違反を現認した警察官及び検察官に対する供述並びに当審判廷における審問においても一貫して第II種と誤認したと主張し、なお、これと前掲の如きやや特段の事情が存すること等を併せ考えると、軽自動車たることを認識して運転したとの証明が十分であると認めるには至らない。ほかに審判に付して保護処分をなすべき事由は存在しない。
よつて少年法第二三条第二項により主文のとおり決定する。
(裁判官 礒辺衛)